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いつも通り(?)イブが面白がって首を突っ込んだ末、なんとか解決を見せたある事件が、やっと一段落した。 …そんなイブは、ここ数日寝てばっかりいる。 アルが出かける頃に起きていないのはいつものことだが、下手すると帰っても起きてこない。 ソファーに落ちたパンの屑と、出しっぱなしのカップで、辛うじて(?)食事だけはとっているのが分かる程度だ。 …イブの食事が食事と呼べれば、の話ではあるが。 アルは最初の内、何度か無理矢理起こしてみたりもしたのだが、そもそも自分自身が仕事に追われ不規則な生活をしていることも否めないので、イブの生活態度を改めさせるのは早々に諦めてしまった。 なにかしらの事件が終わると、こんな状態になることもしばしばだった。 一応、食物は口にしているようだし、もうしばらくは様子を見よう、そう思っていた。 ────でも、ちょっと寂しいかな…? 相変わらず顔を出さないイブに、一人分のお茶だけをポットから注ぎながらぼんやりと思った。 せっかく一緒の部屋に住んでいるのに、もう何日も、まともな会話をした記憶がない。 自分自身の意志で始まったことではないにせよ、イブと暮らし始めてしばらく経った。 イブが来る前はずっと、こんな風に一人でお茶を飲むのが普通だったはずなのに、そして自分はその静寂を好んでいたはずなのに…今は何かが物足りない。 ────そういえば、確か、曾お爺さんの本にあったな…。 本の中のイブの先祖、シャーロック・ホームズもそんな感じだった。 彼の好奇心をくすぐるような面白い事件のない時は、コカインに手を伸ばして、夢うつつの中で何日も過ごす…。 …まあ、今それをやったら捕まっちゃうけど。 当時は違法ではなかったその行為を想像して、アルは苦笑いした。 ────曾お爺さんも…こんな風に待ったんだろうか? 塞ぎ込んで何日も部屋から出てこない親友を、一人でお茶を飲みながら。 アルは、繰り返し読んだ、曾祖父の物語を思い出していた。 ────僕たちの関係は、意外とご先祖様に似ているのかもしれない。 時として強引なホームズに、振り回されるワトソン。 でもそんなホームズを、ワトソンは友として尊敬していた。 そんなことに思いを馳せ、くすっと小さく笑う。 「アル〜。忙しさでとうとうおかしくなったか〜?」 すぐ横で耳慣れた声がした。 いつの間に起きてきたのか、イブがそこに立っていた。 「イブ!やっと起きたのかい?」 「ああ。それよりも俺にもお茶〜!」 「はいはい」 いきなり起きてきて、かなり身勝手なことを言う同居人の、そんな我儘にもすっかり慣れてしまった。 手際よく新しいカップにお茶を注いで、イブの前に置く。 イブの好きなシナモン・パンも横に付けておいた。 「あ〜、目覚めの紅茶は最高だぜ〜!」 一口飲んだイブが大げさに言ったので、思わずアルは笑ってしまった。 「…なあアル、先刻、なんで笑ってたんだ?」 ちょっと気になっていたらしいイブが、シナモン・パンをほおばりながら、なんとなく話題を戻した。 「…ああ、あれは…」 言いかけて、そういえばイブは何故かホームズと呼ばれるのを嫌っていたことを思い出し、ちょっと躊躇する。 「…君と僕は、意外とご先祖様に似てるかなって思ったんだ」 怒るかな?と少し遠慮がちに続けた。 「……そうだな」 にっ、と笑って、イブが同意した。 思ってもみなかった反応に、アルの方が動揺してしまった。 「え…怒らないの…イブ…?それに君…曾お爺さんの本なんて読んだことないんじゃ…」 「読んだよ。この間、すっげ〜暇だった時、そこの本棚にある奴を全部…」 お茶を飲みながら、アルの唯一の財産である重厚な本棚の方を顎で示す。 「全部って…それなりの量だよ…?」 かなりぎっしり詰まっているその本棚を、アルは軽く一瞥した。 「半日もかからなかったぜ?」 「……」 そういえば、イブは本を読むのも凄く速いんだったっけ…。 アルは、尊敬というか、畏怖というか、不思議な面持ちでイブを見た。 そんなアルを尻目に、イブが口を開いた。 「俺はともかく、確かにアルはご先祖様にそっくりだよな〜」 「えっ?何で??」 意外なセリフに、アルがシナモン・パンを落としそうになる。 曾お爺さんに似ているところなんてあっただろうか…? そらで言えるほどに繰り返し読んだ本の中の、曾お爺さんに関する記述を頭に巡らせる。 「とんでもないロマンチストだし、なんだかんだ言って女の扱い巧いだろ〜?」 イブはそう言って、悪戯っぽく笑った。 「…!!…このッ!イブッ!!」 どうしていつもそんな憎たらしいことばかり言うんだ!!とアルが小さく拳を上げると、イブは身軽にそれをかわした。 「だってホントのことだろ〜?ワトソン君!」 「僕のことをワトソン君と呼ぶな!ホームズ!!」 ────そんな二人のじゃれ合いのような喧嘩は、しばらく続いたのだった。 今回はものすご〜く短めですがι…そしてまたしても尻切れトンボです(死) なんとなく2人の関係を改めて考えてみたら、意外とご先祖(?)に近い部分もあるかな〜?とか思えてきました(笑) ちなみにタイトルはあまり本文と関係がありませんが、おそらくホームズの台詞の中で一番有名であると思われるもの。 …って、この台詞、正確には原作にないんですが(笑) 「初歩的なことだよ、ワトソン君!」 ・タイトルの由来・ 上記の通り(笑) 「Elementary Watson,elementary」よりは、 ”my dear”の辺りに愛があるかと思い、こちらにしました(笑) Digital Holmesはアークシステムワークスの作品です。 (C)1999〜2001 ARC SYSTEM WORKS CO.,LTD. (C)1999〜2001 Koichi Noguchi |